大富豪戦争

最近夜通し大富豪をしている。大富豪をすることで、中学or高校時代の合宿を思い出して懐かしむ遊び。というのは口実で、実際には対戦相手を面と向かって罵りあうための遊びである。もっと正確には、対戦相手を面と向かって罵る遊びである。自分は最強のカードがAしかなく、相手がジョーカーと2を二枚持っていても勝った。みよ、こんなところにも普段の行いの差はでるのだ。私がいかに真面目で礼儀正しく謙虚で善良で可愛いかということは、この日記、特に一つ前や三つ前の日記を読んでもらえばおのずから分かると思う。
善良までは認めうるが、まだその可愛さが分からない、という方にはこの日記を欠かさず読むことをオススメする。そうでない方にも欠かさず読むことをオススメする。噛めば噛むほど味がでる、というではないか。同様に、読めば読むほど可愛さがにじみ出ると考えてもらえばよい。ただし、本当に可愛く思えてきた場合は、ただちに病院に行き、脳に重大な欠陥がないか調べてもらうべきである。
さて、そのように普段から真面目で礼儀正しく謙虚で善良で可愛い私は、幸運の女神に見守られているはずであり、相手に負けるはずがない。しかし、次にきたカードは全て10以下の最弱のカードであった。革命はできそうにもない。このままでは相手に罵られてしまう。私は自信たっぷりにこう言った。
「これで勝ったらジーニアスと言ってちょうだい。もしくはジーザスでもいいよ」
相手は絶句した。私は自分の勝利を確信した。しかし、相手は不当な手段(なんらかのインチキを使った、悪魔に魂を売って勝利と引き換えた、など)を使って、私を窮地に追い込んだ。そして私の負けが決定したとき、相手はただ一言静かに言った。「ジーザス!」

余りものには福きたる

あれはちょうど今頃の季節だった。蒸し暑く、じめじめするくせに、やたらのどが渇くような日が続く。当時保育園児だった少女は、毎日重い1ℓの水筒を持って通っていた。しかし、それはすぐに軽くなった。他の子が少女の水筒のお茶をあてにやってくるからである。
「お茶ちょーだい」
「いいよ」
「お茶欲しかったりするんだけど」
「どうぞ」
「今日水筒忘れてきちゃって…お茶くれるよね!」
「う、うん…」
小公女に憧れていた少女は「お前、いつも持ってきてねえだろ」などと言えるはずもなく、泣く泣く皆に分け与えた。かくしてお茶残量はみるみるうちに減っていき、瓶をさかさまにしても数滴垂れるのみとなった。ここで幼き少女は名案を思いついた。キャップをとれば、キャップと瓶の間にある水分がまだ残っているに違いない!それに、瓶の中には振っただけでは動かない(音をたてない)大きい氷があるかもしれないじゃないか。期待を胸にふくらませ、覗いた先には…たしかにあった。
巨大なナメクジが。少女は焦った。いけない。これでは皆にナメクジ汁を飲ませたことになる。不幸中の幸いは、少女が一滴もお茶を飲んでいなかったことだ。焦りと同時に、猛烈に笑いがこみ上げてきた。その日初めて、1ℓの水筒を持っていってよかった、と思った。

おしゃまなおばあさま

知人のおばあさんの言語感覚は少し変わっている。少しというより大分変わっている。例えば、物を噛むときの音は「あにあに」だし、こすったり引っかいたりするときは「ゲエゲエ(ゲイゲイ)」、奇声を発するときは「いう゛ぇー」あるいは「いえーへっへっへ」だという。そのため彼は、幼い頃から「ご飯はよくあにあにして食べなさい!」とか「そんなとこゲエゲエしないの!」と叱られてきた。
また彼女は農作業がしたくないために「私はノイローゼだ」「今日は血圧が高いから体調が悪い」「今日は腰が…」と言い張る、とってもチャーミングな人物である。ちなみにこの口実はローテーション制で用いられる。ある日真夜中に腹痛を訴え救急車で運ばれたものの、搬送先の病院で「あなたのお腹は痛くなりようがありません。どこか神経がおかしいのではありませんか」と診断されたこともある。ようやく農作業をサボる口実ができたのに、彼女が憤慨したのは本当に不思議な話だ。

「日本人の鼻毛は黒い」は真か

昨日、友人と久しぶりに飲みに行った。寝不足とオーバーワークのため、すぐに酔った。私は「週休4日制、すきあらば5日制」をモットーとしているが、やむにやまれぬ事情で休みが三日になってしまったせいかもしれない。普段めったに愚痴を言わない私だが(ここは高らかに宣伝しておく必要がある)、その日は違った。ぽろりと愚痴をこぼしてしまったのである。これ以上は言わないけど、という私の慎ましやかな態度に対して、友人は是非とも聞きたい、聞かないと眠れなくなるほどだ、と懇願したので、私はしぶしぶ語りだした。すべてを聞き終わったあと、友人はこう言った。
「solaninって結構黒いよね」
心外である。というか、なんという鈍さだ。それでも一緒に青春時代を過ごした友人か。たしかに私の髪の毛は茶色だし、眉毛も茶色だが、鼻毛をみればもとの毛が黒いことなど一目瞭然ではないか。私は日本人だ。髪の毛は染めているからだし、眉毛にいたっては眉マスカラ、略して眉マスを使っているからだ。それは勿論、人に鼻毛がでていることを指摘する女として定評のある私が、自分の鼻毛を気にしたことがないなどと言い切れるはずはなく、無意識に鼻毛を引きちぎっていたために、相手に見えていなかった可能性もある。しかし私は女性では高身長のうちに分類されるはずであり、その結果、鼻の穴ものぞきやすい角度にあるはずだ。私は憮然とした態度でこう尋ねた。「今頃気づいたの?」友人は即座に答えた。「ううん、ずっと前から知ってたけど。でも人の悪口言ってるときホント活き活きしてるよね」

おじいちゃん、だ〜い好き!

高齢の方(特におじいちゃん)が発音する“サテイ(SATY)”のテとイの間に萌えます。もう激萌え。萌えという言葉を軽々しく使ってほしくない、青二才よ生意気な、という純粋かつ萌えの大御所チックな方がいらっしゃるかもしれませんので、お断りしておくと、「この溢れくる感情をどうやって表現したらいいのか分からない!」というときにだけ使わせていただいてます。誤用だったらすみません。
しかし、なぜおじいちゃんでなければならないのか。ひとつには、おじいちゃんへのエロースがあるのかも知れない(祖父は私が生まれる前に亡くなった)。もうひとつは、おじいちゃんならではの発音方法に私を萌えさせる原因があるのかも知れない。というのは、何回も自分でそれっぽい発音をしてみたけれど、全然違う。男友達にも「今から変なこと頼んでもいい?」と無理にお願いして発音してもらったけれど、やっぱりパンチが足らない。おっとりとしていながらも確実に耳に残る“サテイ”が違和感なく頻繁に会話に盛り込まれているCD/DVDがあったら買います。癒しのサントラ発売、どうかよろしく頼んじゃうんだから。

ビヤ樽との問答

ある男の話をしよう。小学校の帰り道、彼は友達とゲームセンターにいた。バレーをしていたせいか肩幅も広く筋肉質だったが、顔には少年特有のあどけなさがあらわれていた(と思う)。少年は、自分たちを値踏みするように見つめる怪しい視線に気がついた。すると、さっきからこちらを見ていた中南米系男二人組のうち、ビヤ樽のような腹をした男が近寄ってきてこう言った。「この漢字の読み方教えてくれへん?難しゅうていかんわー」
ビヤ樽の意外に流暢な日本語に驚きながらも、少年は何の疑いももたずに読み方を教えてあげた。ついでに、いかにもさりげなく、といった様子で肩や胸を触りながらこうも言った。「君、いい体してるね〜。中学生?」そして堰を切ったかのようにこう畳み掛けてきた。漢字の読み方を教えてくれて、感謝している。本当に感謝しているので、君にお礼がしたい。ちょうど自分はマッサージ師だし、マッサージをしてあげたいのだけど、君だけにすると他の子が不公平に思うかもしれない。だからトイレへ行こう。
少年は汗をかいていた。しばし、「ここでいいです」「駄目だ、トイレで」「ここで!」「トイレで!」という押し問答が続いた。友達はゲームに夢中である。よく分からないが、なんだかマズい。マズいが、両脇を大の大人に挟まれては逃げるすべもない。トイレへ連れ込まれた。案の定男たちの手際は良く、てきぱきとパンツを剥いでいき、ついには下着に手を伸ばしだしたが、少年は暴漢に襲われた処女よろしくそこを死守した。ビヤ樽は股間周辺をさすりながら「だんだん気持ちよくなるからね」という言葉を繰り返した。最後には握らんばかりの勢いになった。「もう勘弁してください」彼が泣きだすと、ビヤ樽は心から残念そうに「そっか〜まだダメか…」と言った。まだってなんだ。少年は泣きながら帰った。

少年は高校生になった。部活帰りに歩いていると、前方から太った中南米系のオッサンが近づいてきた。話を聞くと、道に迷ったので案内をしてくれないかとのことだった。そしてこう言った。「兄ちゃん、いい体してるね〜。大学生?」

少し前に、携帯で知らない人からよくメールをもらった。アドレスに数字をつけず、気に入った単語だけにしたせいかもしれない。大抵の人は礼儀正しかったし、そうでない人にはなかば嫌がらせめいたメールを送りつけて撃退した。訂正しよう。礼儀正しい人に対しても嫌がらせメールを送った。全て英語にし、暇なときを見つけては「このサイト面白いから見てみたら?」とか「そろそろ私のアドレスもかえどきかなぁ」といったつぶやき的なものを長文で送りつけた。一ヵ月後、“Sorry,I can't understand English.”という返事がきた。どうやら私は完全に外国人認定されてしまったようだ。これではいけないと思い、誤解を解くべく阿弥陀経を送り続けた。返事がこなくなった。
小学校のとき、栄養ドリンクだったか増毛のCMを見ていた友達のS美が、突如立ち上がって宣伝されている番号に電話し、「yanka!」と叫んだ。なぜだか分からないが、それは私たちの間では女性器を意味していた。私はそのことを電話の相手に伝えるべきではないか、と思ったけれど、相手にとってはあまりありがたくない報告かもしれないとも思い、とどまった。
私は人としてすこぶる進歩している。